最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1928号 判決 1949年5月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人津川友一の上告趣意第一點について。
銃砲等所持禁止令は、昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に關する件(緊急勅令)に基き、銃器刀劍の蒐集に關する連合国最高司令部信號隊メッセージ(一九四五年九月二四日)による指令を履行するために制定されたものであって、所論のように銃砲火藥類取締法第一五條によって制定されたものではない。これら両法令は、それぞれその適用の對象を異にした別個獨立のものであって、銃砲火藥類取締法は今日なお効力を有する法規である。そして、同法第一二條第一七條の規定は、同法第一五條、同法施行規則第四八條によって、銃砲火藥類に非ざる他の戎器に準用されて、昭和一三年警視廳令第六〇号の制定となったのである。右警視廳令第二六條によれば、短刀匕首其の他之に類似の戎器は正當の事由なくして携帶することが禁止されているのである。されば、原審が被告人の判示所爲について、これらの法規を適用して處斷したのは正當であって、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)